葵 -3-

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「ほんで俺の助けが欲しい、と」 「そう」 学園内にある喫茶店に、葵は一人の男子生徒を呼び出した。 白衣。 ネクタイ。 黒縁眼鏡。 いつも通りの服装の黒髪の青年。 特徴的なのはレンズの向こうに見える鋭い眼。 初対面の人が見たら睨まれているようにかもしれないが、これは彼の生まれつきだ。 彼に名前は――東雲 九頭。 学園内ではよく一緒にいるメンバーの一人で、定期戦で代表として戦った者の一人でもある。 「あ、煙草吸ってもいいわよ」 「そら、どうも」 九頭はヘビースモーカーだが、決して相手の許可なく吸いはしない。 例え、それが何度も許可してくれた相手であったとしてもだ。 彼は懐から一本の煙草を取り出すと、ライターで火をつけて煙を吸い込む。 それしっかりと味わうと、天井に向かって煙を吐いた。 「といわけで、何か作って」 「何が、というわけやねん」 そう言って九頭は呆れた顔で葵を見る。 彼女は今回の件については一通り説明を終えた上で呼び出し、彼に頼ることにした。 その理由は一つ――彼は科学者であり化学者なのだ。 様々な発明品を作っては、幾度となく色んな人の助けになっていた。 時には、教員から依頼を受けることもあるらしい。 「まぁ、状況は聞いたから知っとるけど。お前も厄介なことに巻き込まれ取るな」 「この学園に入ってから厄介なことだらけよ。付き合うメンバーが悪いのかしら」 「確かに、俺もそう思うわ」 そう言って、互いに深い溜め息を一つ。 「で、葵。そっちの用件を片付けるには簡単や」 「え?」 「発信機や、発信機。それで一発で解決や」 九頭は煙草を灰皿にもみ消しながら、少しだけ笑った。
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