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「ほんで俺の助けが欲しい、と」
「そう」
学園内にある喫茶店に、葵は一人の男子生徒を呼び出した。
白衣。
ネクタイ。
黒縁眼鏡。
いつも通りの服装の黒髪の青年。
特徴的なのはレンズの向こうに見える鋭い眼。
初対面の人が見たら睨まれているようにかもしれないが、これは彼の生まれつきだ。
彼に名前は――東雲 九頭。
学園内ではよく一緒にいるメンバーの一人で、定期戦で代表として戦った者の一人でもある。
「あ、煙草吸ってもいいわよ」
「そら、どうも」
九頭はヘビースモーカーだが、決して相手の許可なく吸いはしない。
例え、それが何度も許可してくれた相手であったとしてもだ。
彼は懐から一本の煙草を取り出すと、ライターで火をつけて煙を吸い込む。
それしっかりと味わうと、天井に向かって煙を吐いた。
「といわけで、何か作って」
「何が、というわけやねん」
そう言って九頭は呆れた顔で葵を見る。
彼女は今回の件については一通り説明を終えた上で呼び出し、彼に頼ることにした。
その理由は一つ――彼は科学者であり化学者なのだ。
様々な発明品を作っては、幾度となく色んな人の助けになっていた。
時には、教員から依頼を受けることもあるらしい。
「まぁ、状況は聞いたから知っとるけど。お前も厄介なことに巻き込まれ取るな」
「この学園に入ってから厄介なことだらけよ。付き合うメンバーが悪いのかしら」
「確かに、俺もそう思うわ」
そう言って、互いに深い溜め息を一つ。
「で、葵。そっちの用件を片付けるには簡単や」
「え?」
「発信機や、発信機。それで一発で解決や」
九頭は煙草を灰皿にもみ消しながら、少しだけ笑った。
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