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「ほら、頼まれてたもんや」
「……本当に早いわね」
一週間後、九頭から連絡があり再び同じ学園内の喫茶店に集まった。
時刻は昼過ぎ、二人揃って昼食後の初めの授業を取っていなかった為、合間の休み時間というところである。
九頭から渡されたのは黒い巾着袋。
葵はそれを受け取ると、紐を解いて中身を取り出す。
入っていたのは、小粒の豆サイズの黒いシールに手の平サイズのディスプレイ。
「何これ?」
「せやから発信機や」
「これが?」
「それが」
首を傾げた葵に対して、そのジェスチャーが使用方法を理解出来ていないことに気付いたのだろう。
九頭が人差し指でテーブルを二回ほど叩いた。
葵もその音を聞いた後に、渡されものを彼の指し示した場所へと置いた。
「まず、このシールが発信機や。標的に貼ればオーケー」
「へ? スイッチとかは?」
「まぁ、待て。順番があるんや」
「難しいのは勘弁よ」
「誰にでも使えるように作るのも技術者としての実力の一つや」
そう言って九頭は嬉しそうに笑う。
まるで自分の作ったものを発表することが楽しみで仕方が無い――そんな子供のような表情。
幾度とこの表情を見たことがあるが、彼の魅力の一つだと葵は思う。
「あ、煙草吸っていいわよ」
「おう、サンキュー」
九頭は煙草を胸ポケットから取り出しながら説明を続けた。
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