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その発信機の使い方は、九頭の言うとおり確かに簡単なものだった。
もう一つのディスプレイはタッチパネルとなっており、機体のサイドスイッチを長押しすると起動し、画面に映像が浮かびあがる。
ディスプレイをタッチすると、発信機とリンクするかを問う画面が表示され、YESとNOの選択出来るようだった。
YESを押すと画面にマップが表示され、シールとなっている発信機がある場所が表示される。
今はLCアカデミーとしか書かれた四角の場所を指し示していた。
「見ての通り、マップは詳細なもんやない。大体の場所しか解らん。けど、学園内か寮か、それともそれ以外かが解れば充分やろ」
「うん、そうね」
つまりは、寮の門限を過ぎた時間帯――その時に申請もなく寮外にいることがマップに表示されれば情報としては充分だった。
表示画面もハードコピーが可能で、寮外にいる映像画面をコピーすれば証拠となる。
「発信機の有効範囲は街ぐらいまでや。電波も強くはないから地下とかに入られたらアウト。せやから、時間帯になったら頻繁に確認しときや」
「発信機側は電池式?」
「おう、シールの表面に太陽光が浴びとけば半日は持つ。日中は常に充電しとるもんやし問題ないと思う」
「そっか、ありがと」
その発明品を見ながら葵は感謝の言葉を告げた。
九頭の実力からして作ることは容易くとも、それなりに時間を要したことだろう。
一週間という時間を持て余すほどの時間だったとは思えない。多少の無理はしたはずだった。
しかし、彼はそのことを言わないし言おうともしない。
「まぁ、役立ててくれや。俺としては感謝の言葉よりそっちの方が嬉しいわ」
「そうね。役立つわよ、きっと」
「さて、解ってると思うけど、最初の難関があるで」
九頭は煙草を消し、灰皿に捨てると発信機のシールを指差した。
「それを何処に貼るかや」
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