葵 -3-

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その後、二人はメゾが授業を受けている教室へと向かった。 作戦は単純で、九頭がメゾとぶつかり何とかしてヘッドフォンに発信機を貼るというもの。 二人は教室を挟むようにして終礼の合図を待っていた。 暫くすると、チャイムの音が響き、教室からわらわらと生徒達が出て来た。 その中にメゾの姿を見つけ、葵は少し離れた場所にいる九頭を見る。 特徴は伝えていた為、九頭もメゾを認識し終えていた。 多くの生徒達の隙間を縫って視線が合うと彼は頷いた。 そして―― 「おっと!!」 「あっ……」 九頭はメゾの肩にぶつかり、ヘッドフォンを床に落とした。 「すんません、大丈夫ですか?」 「いえ……」 その流れは自然のように葵は見えた。 メゾも特に怪しむような表情を顔に浮かべてはいない。 「おっと、ほい」 「……どうも」 そして、そのヘッドフォンをメゾよりも早く九頭は拾い上げて、彼女へと差し出した。 葵にも見えなかったが、彼はこの時に発信機のシールを貼ったのだろう。 「いやぁ、すんません。ちょっと徹夜明けなもんで、距離感覚が狂ってたみたいやわ」 明るく雑談し、そして、 「おっと、立ち話しとる余裕もなかったんやった。ほな、失礼」 そう言って彼はメゾの前から立ち去った。 その後は一度も相手を振り返ることなく、葵のところまで来ると、二人は並んで歩いた。 「どうだった?」 「成功や。ヘッドフォンのヘッドバンドの内側に貼った。あんなとこは注視せんやろうし、色も上手い具合に黒で同化しとる」 「……ありがと」 そう言うと、葵はディスプレイを取り出し、起動させる。 場所は未だ学園内だが、少しずつ移動しているのが確認出来た。つまりは成功ということだ。 「俺が協力するんは一先ずここまでや。もし、また発信機が必要になったら言いに来い」 「解った」 「後は、葵――お前が頑張るんや」 そう言い終えると、九頭は手を振り、近くにある階段へと進行方向を変えた。 彼の言葉をしっかりと受け止めると、葵もまた軽く手を振り、真っ直ぐ歩いて二人は別れのだった。
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