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何事かと思うと、遠方で巨大な花火が連弾で打ち揚げられる様子が見て取れた。
僕達二人は一瞬気取られその光景に見入られた。しかし僕は口端を上げ微笑を浮かべると、何事も無かったかの様に直ぐ彼女へと振り向き直す。彼女は未だ遠方の事態を理解し切れず呆気に取られてはいるが、これは間違いなくシドの仕業の一環だろう……。
近代の花火は製作から点火迄がプログラム制御され、音楽演奏とタイミングを同期させた自動発射や遠隔操作も可能な様に設計されている。彼はパレードの最終日に発射される予定だった花火の機構へハッキングし、革命が成功した暁の祝砲へと代えて勝手ながら打ち揚げ始めたのだ。
全く以って彼らしい、仮面舞踏会の終幕を飾るに相応しい粋な演出だった。
遠い残響の様に花火の炸裂音は耳朶を打ち、闇夜の帳を背景に多彩で鮮烈な華を次々に咲かせては儚く散って行く……。
そんな塗り替えられた祝祭の典雅な情景を横目に、僕達は潤んだ眼差しで見詰め合う。
お互いに優し気な微笑を湛え、無言の侭、徐々に僕達の唇は距離が縮まって行く……。
―そしてその日、僕達は生まれて初めてのキスをした。
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