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「僕のしたことはあまりに大き過ぎたんだ。
兄さんは僕への恩を感じて、自分自身を抑圧するようになった。それは僕が望んだことじゃなく、兄さんの意思によるものだったけど、知らず知らずのうちに不満やストレスが鬱積していったんだろうね」
難しい問題だ。
もし愛藺が同じ立場だったら、やはりその恩を色々な形で返そうと思うだろう。でもそれをいつまで続けるべきなのか、はたまたどこまでやれば恩を返したことになるのか、線引きするのが難しい。
おまけに二人は実の兄弟で、不老不死だという。その未来は途方もなく長い。
「凱悦はどう思ってたの?蘇生したお兄さんに何を望んでた?」
潮風に細められた目が対岸の九龍を見渡す。
「──ずっと……一緒にいたいと思ってた。僕には兄さんしかいなかったから。もっとも、そういう環境を作ってしまったのは僕自身なんだけど……」
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