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どういう意味が尋ねると、凱悦は少し言いづらそうに俯いた。
「ウイルスをつくるために二つの脳内物質が必要だと言ったでしょう? それを父親から採取したんだ」
「それって……お父さんを殺したってこと?」
信じられないというような問いに、凱悦は侮蔑するように冷笑した。
「そんなふうに呼べるほど立派な人間じゃなかった。父は生まれつき碧眼だった兄さんを不吉だ、黄家の恥だと言って、日常的な虐待を繰り返していた。兄さんが植物状態になったのだってそれが原因なんだ。あいつは殺されるだけのことをしたんだ……!」
掴んでいた金属製の手摺が、凱悦の手の中で粘土のようにグニャッと変形する。
「……僕は兄さんさえ側にいてくれればそれで良かった。一緒に普通の生活をしたいと思っただけだよ。なのに兄さんは、僕を無視してよそに恋人をつくり、次第に僕から離れて行った。……恋人の名前は梁(リャン)愛萍。君の曽祖母さんだよ」
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