4.ラマ島

16/43
前へ
/363ページ
次へ
 自分を助けてくれた麗星が、そんなひどいことをする人だとは思えないが、だからといってはっきりと否定する材料もない。 「だったら、今日また戻ってきたのはどうして?」 「それは……」  当然の疑問を問う愛藺に、凱悦はどこかハッとしたような表情を見せた。 「──最初は自分でもよくわからなかったんだ。無性に兄さんが恋しくなって……。  でも帰ってきてみてわかったよ。兄さんは僕の脳をいじっていたんだ。『帰趨(きすう)プログラム』を追加してね」 「きすう?」 「帰趨というのは、物事が最終的に行き着き、落ち着くことだよ。僕が兄さんに対してどんな感情を抱いていようと、結局僕は戻ってきてきてしまうんだ。それは人間的な感情よりも上に位置づけられている」  要するに、麗星に逆らいたくても逆らえない、ということなのだろうか。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加