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自分を助けてくれた麗星が、そんなひどいことをする人だとは思えないが、だからといってはっきりと否定する材料もない。
「だったら、今日また戻ってきたのはどうして?」
「それは……」
当然の疑問を問う愛藺に、凱悦はどこかハッとしたような表情を見せた。
「──最初は自分でもよくわからなかったんだ。無性に兄さんが恋しくなって……。
でも帰ってきてみてわかったよ。兄さんは僕の脳をいじっていたんだ。『帰趨(きすう)プログラム』を追加してね」
「きすう?」
「帰趨というのは、物事が最終的に行き着き、落ち着くことだよ。僕が兄さんに対してどんな感情を抱いていようと、結局僕は戻ってきてきてしまうんだ。それは人間的な感情よりも上に位置づけられている」
要するに、麗星に逆らいたくても逆らえない、ということなのだろうか。
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