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真摯に宣言した刹那、凱悦の端正な顔が苦しみに歪む。
「どうしたの!?」
「なんでもない……大丈夫」
無理に微笑んだ凱悦だったが、その身体はグラッと傾き、愛藺に抱きとめられた。
「凱悦!?」
「ごめん……大丈夫」
全然大丈夫ではない。
「どこか痛いの? ねぇ!?」
肩を支えて顔を覗き込むと、その顔色は蒼白だった。
「頭が少し……。今の発言、帰趨プログラムにとっては、許し難いものだったみたいだ」
「凱悦……」
愛藺は言うべき言葉が見つからなかった。
彼は絶対的なプログラムに反抗してまで、たった一人で助けにきてくれたのだ。兄と決裂するということは、和泰という巨大組織まで敵にまわすこととなるのに。
「──ねぇ、愛藺」
遠慮がちに捕まっていた手が、愛藺の背中を力なく抱きしめる。
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