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「僕のことは嫌いでもいいから君を守らせて。たぶん僕にしかできないことだと思うから」
「でも、そんなことをしたら……」
「いいんだ」
少しふらつきながら腕を解く。
「これも僕の責任だ。兄さんを止めることも」
毅然とした光をたたえたその眼差しは、彼がもうすっかり心を決めてしまっていることを示していた。
「ほら、そんな暗い顔しないで。ちゃんと守るから大丈夫だよ」
「……うん」
そう頷くので精一杯だった。本当はあと100回くらい「うん」と言いたい気持ちだったけれど。
「それじゃあ……とりあえず安全な場所へ移動しようか。ラマ島に僕しか知らない家があるんだ。そこなら──」
その時、通りの方で連鎖的にタイヤの鳴る音がし、たくさんのドアが開けては閉じられ、硬い靴音が幾つも重なった。
「な、なに?」
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