4.ラマ島

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 プロムナードを満たしていたカップルが、次々とおびえた様子で四散していく。それは通りに近いカップルから波状的に広がり、最後に残ったのは、愛藺と凱悦の二人だけになっていた。  空気が一変する。  まるで飢えた猛獣が徘徊するジャングルのような緊迫感だ。 「凱悦……」  思わずすぐ側の手を掴むと、長い指がぎゅっと握り返してくる。振り仰ぐと、彼の鋭い眼差しは油断なく周囲を見渡していた。 「和泰の構成員だ。見つかってしまった」  確かに二人を囲むようにたくさんの気配が感じる。 「どうしよう……」  その声はすでに震えている。 「愛藺」  握られた手の力がぎゅっと強まる。 「君が一緒なら撃ってはこないだろうから、数が増える前に突破できるかもしれない。僕から離れないで。いいね?」 「う、うん!」
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