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その場で垂直に飛び上がると、相手のこめかみを一蹴し、両手をついて着地したと同時に、反対側からかかってきた構成員の足を払う。
腕の屈伸だけで立ち上がると、鮮やかな回転蹴りで三人をなぎ倒し、それで包囲が瓦解すると、焦って突出してきた構成員へ向かって駆け出し、膝で相手の顔に痛烈な一撃。
「あぅ、あぅ、あ……う」
右ストレート、左ストレート、アッパー。
最後のひとりをパンチのフルコースで締めくくった凱悦は、硬く握り締めていた拳を解いた。その呼吸は肩が上下するほど激しい。
彼の周囲には、二十人以上の構成員が放射状に倒れている。全員倒すのに十分もかからなかった。
「凱悦!」
凄まじい戦いぶりを目の当たりにした愛藺は、本人よりも興奮した様子で駆け寄った。
「大丈夫? 怪我、しなかった?」
呼吸を整えながらそう問う凱悦に、思わず失笑してしまう。
「愚問よ。そんな暇なんてなかったわ」
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