4.ラマ島

26/43
前へ
/363ページ
次へ
「ねぇ、どうして英語で言ったの?」  早速気になって尋ねると、凱悦は走り出したタクシーのシートにゆったりともたれながら、いたずらっぽく微笑んだ。 「なんとなく困った外国人を装えば譲ってくれるんじゃないかな、って思って。それに会話の内容を聞いていたら、みんな帰る人ばかりで、特に急いでいる人はいないみたいだったから」  確かに彼の外見は欧米人との混血を思わせる。それにしても、福建語もタガログ語も日本語も出来るとは。医者を目指していたというから、物凄く優秀なのだろう。 「みんな優しい人たちで良かったね」  そうだろうか。愛藺は彼にだけ優しいのだと思ったが。  それはともかく、プロムナードから離れられたことで、お互いに安堵のため息がもれる。 「もう安心かな?」 「95%はね」  残りの5%は何だろう?
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加