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「兄さんさ」
厳しい表情で凱悦が振り返る。
麗星はどうしているのだろう?やはりどこかで凱悦たちを捜しているのだろうか。
そう問うと、凱悦は少し俯いたまま首を横に振った。
「まだ無理だと思う。……たぶん」
「まだって?」
「考えてもごらんよ。僕は君たちより後に蘇の屋敷を出たんだよ。兄さんがすんなり逃がしてくれたと思う?」
確かにそうだ。
「じゃあ……戦ったの?」
触れたくない話題だけに、彼の反応は鈍かった。
「うん……。できれば決着をつけてしまいたかったけど……やっぱり駄目なんだ。兄さんだけはどうしても殺せない」
先ほどの帰趨プログラムが邪魔をするということなのだろう。
「でも治癒しにくい怪我は負っているはずだ。完治するにはあと4時間、動けるようになるには1時間くらいかかると思う。それがなんらかの理由で治癒が早まったら……サイアクだね」
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