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サラサラの黒髪の下、十代特有の危うげな魅力が宿る瞳に、怪しいほどの甘やかさが浮かび上がる。それが無表情ゆえの端正さと相まって、彼の美貌を見事に彩っていた。
『美人だなぁ……』
愛藺がそうため息をもらした、刹那。
凱悦は、何気なく見ていたサイドミラーに眉をひそめ、それからブン! と音がしそうなほど勢いよく後ろを振り返った。
「あぶないっ!」
間髪入れずに襲ってくる物凄い衝撃と轟音。
次いで、体験したことのないような慣性の法則。
激しい衝撃と揺れに訳もわからないまま目を開くと、愛藺はシートに横倒しになったまま、かばって下敷きになってくれた凱悦の胸にしがみついていた。
「凱悦!? 大丈夫!?」
慌ててどけると、凱悦は低く呻いて頭を抱えながら起き上った。
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