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「…なんとか。君は?」
「お陰様でなんともないわ」
前座席とシートの間に半ば挟まってしまった凱悦を助け起こし、周囲を見渡した愛藺は、その激変ぶりに言葉を失ってしまった。
タクシーは歩道に乗り上げてしまっていた。
天井が内側に大きくへこみ、後のガラスはクモの巣のように大きなひび割れができている。細かいガラス片が座席のあちこちに散らばり、運転手はハンドルを握ったまま気絶してしまっていた。
大通りを外れたせいか幸い後続車はなく、歩道を歩いていた人もいなかったようだ。
「一体何が起こったの!?」
とりあえず誰も命に別状がないことにホッとし、外へ出ようとドアに手をかけると、凱悦がものすごい力でそれを阻止した。
「駄目だ! 外へ出るな!」
「ど、どうして?」
らしくない態度に戸惑うと、凱悦は切れるような眼差しで、キッと前方を睨み据えた。
「サイアクだ……」
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