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愛藺の表情がたちまち凍りつく。
「や、やだ……ひとりでなんか行きたくないよ! 一緒に行ってくれなきゃ嫌だ!」
突然のしかかってきた不安をそのままぶつける彼女に、凱悦は切羽詰まった様子で、どうしていいかわからないというようにきつく目を閉じて叫んだ。
「駄目だよ! 行くんだ!」
あまりの大きな声に愛藺もすべての感情が一瞬で吹き飛んでしまう。
「さっきの構成員とはワケが違うんだ。君を守りながら戦える相手じゃないんだよ!」
真っ向から突き放された愛藺は、どうしてよいか途方にくれて涙があふれてきた。
頭では彼の言っていることを理解しているのに、どんどん増殖する不安が、あっと言う間に彼女の正気を飲み込んでしまう。
「ごめん……泣かないで」
感情的になってしまった自分を責めるような声。
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