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教室はまた静かになった。優は嬉しいのか寂しいのか、なんとも言えない心境だった。
数日後、グラウンドに祐一の姿が見えないと思ったら、また教室に現れた。
「あっ」
「…よう」
祐一は声をかけてくれた。
「ど…どうしたの?」
「大井に、パシられたから」
祐一はいつかと同じことを言った。
「あの、どこかクラブ入ってるのか?」
大井のロッカーに向かいながら、祐一が聞いた。
「えっ。うん、茶道部」
「今日も一人で教室いるから、帰宅部かと思ってた」
おどけた声を出す。
「ううん。ぐ、偶然だって。今帰ろうとしてたところだし」
「へぇ」
祐一は相づちを打つ。
それからは、頻繁に祐一が来るようになった。週に二回くらい。優の部活がないのは週に三日だから、本当によく顔を合わせていた。
理由はいつも『大井からのパシり』だったから、始めのうちは人知れず大井にとても感謝していた。
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