30人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなある日、祐一が言った。「あのさ」
「うん?」
「茶道部がない日は、いっつもここからサッカー見てるじゃんか。興味あるの?サッカー」
優の目を見て言う。その目は何かを訴えているかのようで、優はとっさに目をそらす。
「えっ?あ、いや……部活ない日は、暇で暇で…」
「ふぅん……」
考えてみれば、優は祐一にほとんど本当のことを言っていなかった。気持ちを隠そうと躍起になるうちに、自分の周りを嘘で固めてしまっていたのだ。
会話は途切れ、気まずい沈黙に包まれた。口べたな優にとって、沈黙はさほど疎遠なものではない。たたその寂しさが、少し深かっただけ……。
「じゃあ、そろそろクラブでるから」
そう言い残して、祐一が教室を出て数分後、部活ではしゃいでるその姿を見ると、なぜだか胸が痛くなった。
これは、きっと恋じゃない。
最初のコメントを投稿しよう!