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そうだ。きっと、恋じゃない。優はこう考えていた。
優にも恋愛経験はある。中学の頃に、ほんの短期間だが付き合っていた男子がいた。付き合ってる間は楽しくて、マイナスの面なんて全然ないと思っていた。
なのに、祐一と話していると、急に気まずくなったり罪悪感に苛まれたりする。出どころのわからないその感情は…うん、恋なんかじゃない。むしろ、面倒に巻き込まれた、そんな感じだった。
本当のところは――優自身も気付いていないことだけど――優は戸惑っていた。遠くから眺めていることしかできない程、人を好きになったのは初めてだった。それで、空回りしたりして戸惑っていたのだ。だが優は、そんなこと気付くわけもない。
優が一人で悩んでいるうちにも、夏はどんどん過ぎていった。綿菓子のような白い塊が、少しずつ北へ移動してきていた。
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