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キャメルの欠片の跡が残る指先を、名残惜しそうに彼は見つめる。
私は躊躇なく新しいフィナンシェを箱の中から取り出し、齧った。
塩分の強いバターが舌先に残り、なんともいえない満足感を連れてくる。
何度食べても新鮮さを感じさせる。
このフィナンシェが美味しいかどうかなら、
嘘偽りなく美味しいといえるけれど、
バビロンの問題は、記事が真実かどうかさえもわからない。
会社の中にいるというのに、私は何も知らないのだと痛感した。
「美味いな...」
そう小さくつぶやいたのは、成宮さんだった。
瞼を閉じ、さもうまそうに口元をほころばす。
このまま、難しい話を忘れて美味しいものを味わい続けたいと、世界を閉じた。
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