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学校なんて、もうそりゃ注目の的で。
中川が一人で退屈してるところなんて見たことないもん。
男女問わず人気があって、先生からでさえもチヤホヤされてる、彼。
でもいつも至って表情変えないで、クールを保ってて。
そんな中川を外から見てるのが、わたし。
クラブチームに入ってくる前から、もちろん彼の存在は知ってた。
そりゃそうだ、だってこの学校ではヒーロー的存在だもん。
わたしたちの学年はクラスが六クラスあるんだけど、クラスに少なくとも三人は中川のファンがいるっていうのを噂で聞いたことがある。
かっこいいな、話してみたいなとは思いながらも、クラスも違うし接点がなかった。
だけど野球チームが一緒になって、そこからちょこちょこ話すようになった。
正直ちょっとだけ、羨ましかったんだ。
わたしもあんなふうにチヤホヤされてみたいなって。
だって、なんだか彼だけ異次元の世界にいるみたいで。
でも話してみたら印象がころっと変わった。
全然えらそびるわけでもなく、普通の小学四年生だった。
それが逆にまた好感を持てた。
なんていうんだろう。
こんなにチヤホヤされてもヘラヘラしてないし、なんか自分の芯を強く持ってる、って感じ。
生まれて初めて気になる存在ができた。
休日は野球のクラブチームで。
クラスは違うけど学校でも、たまに廊下で会えることが、わたしのなかの日々の幸せだった。
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