最後にやっと

5/14
前へ
/260ページ
次へ
自分を納得させるように、よしっと頷いて丸め込めてた体を解放するように立ちあがる。 そして、くるっと改札に背中を向けたときだった。 かすかに聞こえる、誰かが電話で話す声。 あれ………? まだだれかホームにいたのかな。 再び体を反転させてその声の主を待つ。 声がだんだん近づいてきて、角から曲がってきたのはまぎれもなく中川だった。 彼はまだわたしに気づいてなくてそのまま改札を抜けてくる。 だけど、正面に立ち尽くしたわたしに気づくと電話を耳にあてたまま、サッと立ち止まった。 「ごめん…またあとでかけ直す」 視線を逸らさないまま中川は電話を切った。 「か…りな?」 「……………」 「かりな…だよな?」 「うん…」 「久しぶりだな…」 「久しぶり…」 「どうした…?こんなところで」 「ちょっと………伝えたいことがあって」 「そっか…」 「…………今から…時間ある?」 「俺は大丈夫だけど…」 「じゃあ公園行こう…?」 「うん…」 中川は急な誘いに戸惑いながらも、わたしについてきてくれた。 中川と最後に話したのもこの公園だった。 わたしたちはあの時と同じようにベンチに腰をかける。 フゥー、呼吸を整えるように大きく息を吐き出すとなんだか落ち着きを少し取り戻したような気がした。 もう逃げられない。 「あのね…中川に伝えたいことがあって」 「うん」 「聞いてくれる?」 「聞くよ?」
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加