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「………やめとけ…」
恐る恐る横に目を移すと中川は遠くを見据えるようにして、わたしとは一切目を合わせようとしない。
「え……?」
「俺はやめとけ…」
「どう…いう意味…?」
「俺じゃお前を幸せにできない」
「あっ、大丈夫だよ。中川にはもう彼女いるもんね」
「え…?」
わたしの言葉にやっと中川がこちらに顔を向ける。
「いいの。わたしはただ自分の想いを伝えたかっただけ」
中川の目をしっかり見据えて、ニッコリ微笑む。
「いや、そうじゃなくて。俺彼女なんていねえよ…」
「はっ?いやいや…そんな気使わなくたっていいよ。わたし、見たもん。天王寺で会ったとき中川の横に彼女いたじゃん」
「はっ……?」
「いや、はっ?じゃなくて…だから」
「あれ彼女じゃなくて妹」
「へっ…?」
「だからあれは妹だって」
「うそ…」
「うそじゃねえよ」
「えっ、わたしてっきり……」
「年子の妹」
「そっそうなんだ…中川って妹いたんだ」
「うん…」
「そっか…なんかごめん」
「いや、お前が謝ることねえよ」
「じゃあ…やっぱり冷めたよね?」
「はっ…?」
「そうだよね…最後に約束したときからもう丸二年経つもんね」
「…………」
「あっ、いいの…いいの。気にしないで。わたしずっと胸に秘めてた思い伝えられてすっきりした」
「………かりな…?」
「ん?」
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