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「無理してた分、症状は結構深刻で………今もずっと入院してる。かりなと天王寺で会ったとき、あのときちょうど妹の症状が落ち着いて外出の許可がでたから買い物に行ってたんだ」
「……そうだった…んだね」
自分の勝手な思い込みが恥ずかしくなる。
「うん…勘違いさせて悪かった」
「ごめん…わたしが勝手に」
「俺さ……ずっと気になってた…かりなのこと。ずっと気がかりで。でも妹が大変な状況で。親も共働きだから俺しか妹の面倒見るやついなくてさ。学校終わったら病院に直行して。病院で受験勉強して。夜遅く帰ってきたらもうあとは寝るだけで、また朝になって学校行って。毎日毎日そんな生活送ってて。だからお前を迎えにいくことできなかった」
「そんな大変な状況だったなんて…」
「大学生になって余裕ができたら迎えに行こうって考えたりもした。でも平日は専門学校だから夜まで授業がつまっててそれ終わったら病院行って。土曜、日曜は朝から晩まで働き詰めで。そんな生活送ってて、ふと思ったんだ………かりなは、俺といても幸せにはなれないなって。俺かりなを幸せにする自信なくして…迎えに行くのも怖くなって」
「ごめんね…」
「えっ…?」
こちらを振り向いた中川の目には少しだけ光るものがあった。
「なんにもしてあげれなかった…わたし中川の助けになりたかったよ?」
そばで中川を支えたかった。
「かりな…」
そうつぶやくと再び雑草だらけの地面に視線を落とした。
「全部一人で抱えこんでたんだね。わたし中川の力になりたいよ…今からでも」
少しの静寂が流れて、再び中川が口を開く。
「ダメだ…お前には迷惑かけたくないんだ」
「強がらないでよ!」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出て横にいる彼がビクッとなったのがわかった。
「中川は全部そうやって一人で抱えこもうとする…もっと頼ってよ…」
「かりな…」
「中川のことが好きだから。大好きだから。一緒にいたい。支えになりたい。それじゃダメ?」
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