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その昔、梨花の母はこの地方を襲った澱姫(おりひめ)という異形をその身に封じた。けれど、彼女の胎には梨花がいた。梨花はその異形の力を継いで生まれ、産み落とした母はその腕に梨花を抱くこともなく息絶えたという。
以来梨花は、鬼子、忌み子と周囲からは邪険にされていた。
過去に一度、梨花が身の内に巣食った鬼に取って代わられたときは、もう少しで消されてしまうところだった。けれどその窮地を、色々な人に助けられて抜け出した。その先も梨花は、数少ない味方に助けられてきた。叔父も、その一人だ。今日も梨花は、叔父に頼みごとをしている。
「その格好にブーツとは、ハイカラだな」
和敏叔父は梨花をざっと眺めて、そう口にした。梨花はあ、と自分を見下ろす。
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