貴公子とおてんば巫女

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 今日の梨花は、白衣に緋袴(ひばかま)。巫女の装いをしていた。そのくせ足元はこげ茶色のブーツだから、ハイカラといわれても仕方がない。 「まるで、大正時代の書生さんですね」  ふと叔父の背後から声が聞こえて、梨花はどきりとした。 「狭霧……」  梨花の身の内に潜んでいた澱姫を取り除いてくれた少年、安曇狭霧が、淡い色の風呂敷包みを抱えて立っていた。 「なんで、今日ここに?」 「わしが呼んだ」  にっこりと和敏がいう。 「狭霧を、今日の助手にな」 「え……」
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