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梨花は生まれついて、黄泉の瘴気も体内に持ち合わせていた。母に封じられ胎児の中に逃げ込んだ異形が、力もろとも梨花に授けた、それは人体にとっては有害な毒だった。
梨花の身体は常人より強いが、あくまで人間のものである。生まれ持った毒でありながら、それを制することができない。
ゆえに、年に何度かは瘴気を祓わなければならない。簡単にいえばお祓いだ。
去年までは、父や兄がしてくれた。けれど今年からは、梨花は叔父に頼らなければならない。家族以外の誰も、そこまでの梨花の事情を知らないのだから。
「狭霧に、教えたんですか?」
梨花の身の内から瘴気があふれているのはあくまで彼女自身の生まれ持った肉体的な問題であり、彼は、梨花が数ヶ月おきにお祓いを受けなければならないという事情は知らないはずだった。
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