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しんー…と静まり返る。道場にはピリピリとした雰囲気が漂っている。
何秒たっても、お互いに動かない。
それはお互いにお互いの強さを肌で感じているからこそ。
普通だったら秒殺して終わりなんだけど、彰相手にそんな真似は出来ない。
彰には微塵も隙がなかった。
ただ、違うのは殺気。
殺る気満々と言った様子で殺気を放っているのは僕。
でも彰はそれを受け流すだけで殺気なんかは全く出してない。
…癪に障るよね。
「こないんだったら、こっちから行くよ?」
試合開始から微動だにしない彰に、痺れを切らして、溜め息混じりにそう言った。
最後に疑問符をつけているものの、全て言い終わらない内に、僕は床を蹴る。
ビュオ!
「……」
彰は紙一重で木刀を横へ避け、後方へ退き、一度体勢を立て直した。
彰の額に薄っすらと汗が滲む。
しかし、彰の表情に変化は無い。
ただいつも通りにこやかに笑っているだけだった。
ふぅ…と息を吐き強く床を蹴った彰は、僕の首を狙い木刀を横一線に振る。
だけど彰の攻撃を読んでいた僕は、その攻撃を難なく受けた。
「首狙い、って…物騒だねぇ…」
「心外です。先程私の顔面狙いで突きを放ったあなただけには、言われたくない。」
お互いにこやかに微笑みながらも、木刀を握る手に力を込め、鍔迫り合いになる。
彰は、このままでは不利だと考えたのか直ぐに一度僕の木刀を弾き、距離をとった。
そしてすぐさま軽やかに床を蹴り、踏み込んでくる。
僕も負けてはいられない。
彰の木刀を受け流して、逆に彰に攻撃を仕掛けた。
彰は攻撃を受け流されたものの、すぐに僕の方へ向き直り、木刀を受け止めた。
一瞬、彰の顔が歪む。
彰の心中を知ってか知らずか、僕はクスリと笑う。
「山南さんのその細い腕で、この攻撃を受けるのは少しキツいんじゃない?」
彰を煽るように言った後、目にも止まらぬ連続攻撃を繰り出した。
スパパパパパァン!
ガッ! ガギィッ! パァン!
凄まじい速さで、鋭い攻撃を繰り出す。
先生には神業だ、なんて言われたけど、それを全て受け流す彰はまさに神業だと思う。
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