まえがき

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光に影は付き物である。   かの聖徳太子にも、天下の風雲児・織田信長にも、明治維新の立役者・桂小五郎(後の木戸孝允)にも、栄光の裏には必ず暗躍したもの達が存在した。 それは、新選組も例外でない。 新選組の光の裏にも、影は存在したのだ。 時には敵の懐で、時には島原などの遊郭で密かに情報を集め、時には間者を暗殺し時には飛脚として走り、時には負傷した隊士たちの手当てをし。 それこそが、“監察方”と呼ばれる新選組の影の隊士たちである。 主だった者を挙げるならば、山崎烝や島田魁と言ったところだろうか。   鳥羽伏見の戦いで、副長であった土方を庇い死したとされている天才監察方・山崎。隊内一の剛腕で、最後の最後まで新選組隊士として土方と共に闘い続けた島田。 この二人の名は、新選組に詳しい者なら一度は耳にしたことがあるだろう。 しかし、彼らは影であるが故に、明細な記録が残っておらず、謎に包まれている。どの様な者が何人いたのか。そして、彼らが本当に存在していたのかさえ。  ならば。 池田屋事件の際に屯所まで走った隊士とは誰なのか? 長州の情報を集めていた隊士は誰なのか? 彼らは。 確かにそこに存在していたのである。   今、此処に記そう。 記録から消されし一人の女隊士の物語を。
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