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「何故私が乗り気になってあそこへ行こうと思った時に変な事やってんじゃああ!」
かなでは茶道室に戻るやいなや、畳へスライディングして倒れ込みながら悔しそうに畳をドンドンっと音を立てて叩く。
おかげで、綺麗に着こなしていた着物はところどころ皺が出来たりはだけたりして、本人と同じく何とも雅さに欠ける様相になった。
「あらあら、そんな風に取り乱しているとせっかくの着物が台無しだし、あと茶道部員としての品がないわよ、かなでちゃん」
突然、探していた流音の声が聞こえ、かなでは飛び起きるやものすごい勢いで後ずさる。
そして、彼女は壁に背中を密着させてまるで化物に出会ったかのように、いつの間にか茶を啜っている流音に指を差して驚く。
「いいい、一体いつの間にそこに!??」
「いつって、かなでちゃんが寂しいって言ってそれから私をここへ連れ去ろうと画策して実行しようとして、そして今に至るまで?」
「つまり最初から居たわけね!」
ぜっっっんぜん気づかなかった! 何この子、凄腕のスパイか何か?
しかも、さり気なくお茶点てて飲んでるし……
「流音って茶を煎れれたのね」
「婦女子の嗜みだから、ふふふ」
「じゃあじゃあ、婦女子の嗜みとしてここに入らない?」
「作法は嫌という程学んでいるから遠慮しておくわ…… うーん、そうねぇ」
「お?」
「私のサイエンス部に入部してくれるなら良いわ」
彼女の提案にかなでは、すぐさまOKを出しそうになりぐっと我慢する。
あそこに入るのは良いのだが、一体全体どんな活動をしているか分からないからだ。
もしかしたら流音がフリーダムな感じになっているのもきっとあそこが原因だろうし。
「どう? 良い提案でしょ? てこずっているようなら肩を見せるわよ」
そう言うなり、流音はかなでに制服の襟首からチラッと肩を見せつける。
「一体誰得よ」
かなではそう言い、彼女に近づくと肩を見せる事で少し崩れた流音の襟を直すのだった。
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