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そういえば10年前は胡桃ちゃんに言われたんだった。
幸せになる為に幸せにしてあげる。
それって何て幸せなんだろう。
「そうだね。
私だって幸せになりたいもん。」
私はようやく唯人の想いに気付いた。
自分を深く愛してくれる人を幸せにしてあげたい。
想いに順位なんか付けられないけど、きっと小鳥遊くんは私がいないと幸せになれない。
そして唯人は私じゃなくても大丈夫だ。
そう思えば全ての事が納得できた。
「ありがとう。」
海斗くんは教会の中へと消えて行く。
私は父の腕に手を掛けた。
教会の木製の扉を前にして、顔は真正面。
「お父さん…、今までありがとう…。
私幸せになるね。」
「ああ、幸せになっておいで…。」
そろそろ定年間近の父の、気弱で優しい言葉。
10年前とは大違い。
あの時の父は始終ムスッとしっ放しだったから…。
ホテルのスタッフの人の合図と同時に扉が開く。
ギーッと音と共に、一歩、二歩と、
私は今小鳥遊くんの元へ。
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