【1】晴れのち曇り

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そうして働く事約3時間。 カランカランと数名のお客さんが出て行って、今は二組のお客さんだけ。 ようやく一段落。 「ナナー、急に悪かったな…。」 と、鷹くん。 「ううん、別に暇だったから平気だよ。 ちょうどお金も欲しかったし一石二鳥!」 イエーイと私はVサイン。 すると鷹くんが決まり悪そうにポリポリと頬を掻く。 「実はさ、夜のバイトの子が急に辞めちゃってさ、 ナナには悪いんだけど…、 たまにでいいから夜の方も手伝ってくれないか?」 私は少しだけうーんと考える。 空が部活から帰ってくるのが8時近くだから、あまり会えなくなっちゃうな…。 でも鷹くん困ってるみたいだし…、 「…たまにならいいよ。」 私は顔の前で両手を擦り合わせている鷹くんにニコッと笑った。 「サンキュー!! あー、マジで助かったー!! ナナありがとなーっ!!」 「フフッ、だけど賄い付きねー!」 と、食い意地を出してしまった。 「OK!」と鷹くんの声と共にカランカランとドアが開いて、一組のカップルが店にやってきた。 「いらっしゃいませー!」 と、私と鷹くん。 そのカップルは私たちをチラッと見た後、静かに店の奥側の席に座った。 そして何やらひそひそ声で話を始める。 私はオーダーを取る為にお水を持ってその奥側の席へと向かうと、テーブルの上にコトッとグラスを置いた。 「ご注文はお決まりでしょうか?」 私はペンを片手に営業スマイル。 .
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