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く、黒王子ーっ!!
ひえーーっ!!
ま、間違いない。
この麗しのスーパーフェイスは間違いなく今日見たばかりのあのイケメン王子だ。
彼は今最大限にその醸し出されるオーラを閉じ込めてはいるけど、帽子を取ったら意味ないよー、と私は心の中で訴えた。
そして暫し目が合うも彼は私に気付く筈もなく、プイッと正面に顔を戻した。
「ねえ、聞いてる?」
と言って黒王子に現在告白中の彼女は、とにかく必死のご様子で黒王子の手を艶かしく掴む。
うわー。
この人私よりすごく歳上だー。
アラサーかな?
スッゴ!!
「ではごゆっくりー。」
私は内心ドキドキしながらその場から離れると、何となく自分の生きてる世界とは違った、彼は別世界の住人のように思えた。
大人だ…。
だけど不意に耳に入ってきた彼の言葉に正直驚きを隠せなかった。
「母さん、もういい加減にしてくれ…。」
…え…?
何?母さん?
今母さんて言った???
私は慌てて振り向くも、女性はポタポタと涙を流して俯いていた。
その頬に戸惑いながら触れる長くて細い指先。
その指がそうっと涙を拭っていく。
彼の顔が見えなくても、その行為一つで私はわかってしまった。
二人は同じ気持ちだ…。
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