【1】晴れのち曇り

20/30
前へ
/872ページ
次へ
空は身体を起こして私の後頭部で何やら作業中。 多分クルクルと自分の指から髪の毛を取り外してるんだろう。 そんな空の息が耳にかかって擽ったい。 ドキドキして体温が上昇中。 キスしたい…。 空とキスしたい。 私は自分でも気持ちが舞い上がっているのがわかった。 空にもっと近付きたい。 「取れた。」 そう言って私から離れる空の服をギュッと掴む。 空が驚いたように目を瞬かせた。 長い睫毛が印象的な空の瞳はどこか女性っぽくて中性的だ。 「…キスしたい。」 自分でも信じられないような事を口走っていた。 だけど空はクシャッと顔を歪ませると、言葉に詰まったようなカラカラの声で、それでも小さく声にした。 「…ゴメン。 俺は七色には触れない。」 「…何で? 私たち付き合ってるのに…。」 ゆっくり愛を育みたいと思っていたくせに、私は本心ではずっと空に触れて欲しかった。 「ゴメン…。」 空にもう一度言われて涙がジワリと浮かび上がる。 悲しい…。 それはやっぱり空に拒絶された事がだけど、私は心のどこかで何となくわかっていたんだ。 …白王子、 空には白とは言えない部分があった。 .
/872ページ

最初のコメントを投稿しよう!

391人が本棚に入れています
本棚に追加