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それから年が明けて、私は何の変哲もない日々を送っていた。
空美が待つ家に帰って、休みの日には空に会いに行く。
その繰り返し。
寒さが厳しい日には人肌恋しくなり、私は空美を抱きしめて眠っている。
淋しい…。
とにかく淋しいんだ。
雨の日は不安に襲われブルブルと心震わせる。
こんな時は空男が居てくれたらって思う。
そしてそんな弱い自分を叱咤しながら常々生活していた。
そんなある日の事だった。
「沖田、ちょっといいか。」と、編集長に呼ばれたのは。
「はい。」
私は仕事を中断して編集長のデスクに向かうと、
「よう!」
久々の空閑さんだった。
「空閑さん、こんな所で何してるんですか?
もしかして暇なんですか?」
私が冗談を言うと、
「バーカ、違げーよ。
おまえに用があって来たんだよ。」
意味深な事を言う。
「じゃあ編集長いいっすね?
沖田借りますよ?」
「ああ、わかった。
沖田には空閑から説明してくれ。」
編集長と空閑さんの意味不明な会話。
「沖田、あっちで打ち合わせすんぞ。」
と言って、私は久しぶりに空閑さんに腕を掴まれた。
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