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「お父さん!」
声をかけると父はすでに涙ぐんでいた。
10年前とは少しだけ違う光景。
やはり嬉しいんだ。
娘に幸せになって欲しいと願う親心に今初めて触れた気がした。
34歳だもんね…。
じきに私もアラフォーになる。
「ナナイロ…、」
「ん?」
海斗くんが中に入れば式が始まる。
「式の前に言っときたい事があって…、」
「何?」
海斗くんが私を迎えに来たのは多分言いたい事があったから。
私は海斗くんを真正面から見上げた。
小鳥遊くんと同じ漆黒。
「俺…、もしかしたらナナイロは兄貴を選ばないんじゃないかって…、
正直不安だった。
事故に遭って、足が不自由になって、
兄貴の奴ずっと散々だったんだ…。」
「事故?」
え?
「やっぱり知らなかった?」
「う、うん…、それはいつの話?」
「4年前…。」
4年前…?
私の中での空白の4年間。
小鳥遊くんの4年間。
それが一本の線となって繋がる。
「兄貴を選んでくれてありがとう…。」
海斗くんは私にニコリと笑う。
「ナナイロ、兄貴を幸せにしてやって!」
幸せにしてやって…。
胸に染みる確かな言葉。
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