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真っ赤な絨毯の上を父と歩いて行く。
いつだったか…、
小鳥遊くんと二人で教会で待ち合わせをした事があった。
確か修学旅行の沖縄で。
あの頃の私たちはまだまだ未熟で、お互いを労る事ができなかった。
結局教会では会わずじまい。
そしてあれから十数年の時を経て、私たちの時は再び交じり合った。
この赤い絨毯の先に小鳥遊くんがいる。
私は真っ白いタキシード姿の小鳥遊くんをすでに瞳に捉えていた。
空と唯人、二人とは真逆の色を纏う憂い顔の君。
どうしてそんな顔をしてるの?
って…、
全部私の所為なんだよね…。
幸せにしてあげたい。
自分は後回しでいい。
それを10も歳下の唯人に教わった。
父から小鳥遊くんへ。
私は新郎へと腕を伸ばす。
「ゴメン…。」
小鳥遊くんの小さな声。
『解放してあげられなくてゴメン…。』
きっと意味はこんな感じの。
だから私は小さく首を振った。
十字架の前。
石膏のマリア像の見ている前で愛を誓う。
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