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いつだったか小鳥遊くんが言っていた言葉を思い出した。
『誰もが愛し合って結婚するとは限らない…。
そういう人も世の中には大勢いるんだ…。』
その大勢いる中の一人だったとしても、なぜか私は自分が不幸だとは思わなかった。
それはきっと相手が小鳥遊くんだから…。
カラーン、カラーン…、
幸せになる為の音がする。
真上で鐘が鳴っている。
私と小鳥遊くんはエントランスでフラワーシャワーを受ける。
パラパラと舞う無数の花弁。
私の両親に天斗、真麻、胡桃ちゃん。
それから小鳥遊くんのお父さんと瑞穂さん、海斗くん。
こじんまりとした結婚式でも、それはそれで満たされている。
幸せになれる予感がする。
ブーケトスのトラウマも、この階段も、全部全部塗り替えられる。
新しい記憶に塗り替えられる。
私は階下に向かって白いカラーの花束をポーンと放った。
ユラユラと落ちるそれを華麗にキャッチする一人の男性。
私はその人に向かって声を張り上げた。
「唯人ー、絶対に幸せになってねー!!
ありがとー!!」
唯人に向かって手を振る。
唯人もカラーを持つ手で大きく大きく手を振った。
「こっちこそありがとー!!」
俺、ナナと出会えて幸せだったよ…。
うん、私も幸せだった…。
私は唯人に最後の笑顔。
唯人も最後まで笑っていた。
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