【3-6】晴天

28/30
前へ
/872ページ
次へ
そして私と小鳥遊くんは二人で婚姻届を書いた。 それを持ってタクシーに乗り込む。 場所は区役所ではなく空のいる大学病院。 ようやく空と向き合える時がきた。 私たちは手を繋いで病室まで向かう。 コツコツと響く長い廊下。 この場所に10年も通った。 未だ目覚めない空。 タイムリミットは今日。 きっと近いうち、今後の話し合いの為にここに呼ばれるんだろう…。 まだ何の決意もできてない。 だけど決意なんか要らない。 だって私は未だに空を信じてるんだから。 コンコンとドアをノック。 やっぱり返事は無くて、私たちは静かに中へと入る。 眩しい陽射しが差し込む。 この部屋の窓は西側で、徐々に落ちて行くオレンジ色の太陽が見える。 私は少しだけ窓を開けて、半分だけカーテンを閉めた。 ユラユラと揺れるカーテンを背に、私は小鳥遊くんと向き合った。 「いつも空にしてる事があるの…。 それを今していい?」 10年間ずっとしてきた事。 それを小鳥遊くんに見てもらいたい。 「…いいよ、俺も知りたい。 ナナイロが今まで水澤とどういう風に向き合ってきたのか…。」 .
/872ページ

最初のコメントを投稿しよう!

391人が本棚に入れています
本棚に追加