泡沫の温もり

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*泡沫の温もり・1* 「葛西(かさい)さん!いま暇ですか?暇ですよね?ちょっと手伝って下さい!」 インスタントコーヒーを作っていると、生活安全課の徳井(とくい)に捕まった。 今年で二十八になる徳井は、怖いもの知らずで署内では有名だ。 何故なら、強面で名の知れる俺に、遠慮のえの字もなく、グイグイと絡んでくるからだ。 「あ?俺は捜査一課だって、何度言えば分かるんだよ、お前。俺は、ゆっくりコーヒーが飲みたいんだよ」 捜査一課。 強行犯の捜査を扱う。 それが、俺の職場だ。 「特に大きな事件もないでしょ?ないですよね。だったら、手が空いてますよね。調書に付き合ってもらいますよ」 ついさっき、山のような解決事件の報告書をやっとの思いで書き上げたところで……ようやく一息つけると思えば、これだ…。 「今は、ペンなんて持ちたくない心境なんだよ。一文字も書きたくねーの。他の奴に頼めよ」 「頼めるなら、言われなくても、もうとっくに頼んでます。いないから葛西さんに声を掛けてるんじゃないですか」 そう言いながら、徳井は俺の腕を引っ掴んで、グイグイと引っ張って行こうとする。
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