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「屋上? 寒いんじゃないの?」
「今日は天気がいいから大丈夫」
天気が良いと、余計に寒いと思うけど……。
「じゃあね、チエちゃん陽ちゃんっ」
彼女は笑顔で手を振り、購買から離れていった。
残された俺と先輩はお互いに会釈をし、俺は再び理央を探し始める。
「太陽発見」
背後から理央の声が届いた。
「な、さっき小夜子センパイ見かけたけど、なんかスゲー焦った顔してたぞ」
「一緒に食べる人、待たせてたんじゃない?」
下りてくる1年生達を避けながら階段を上っていく。
「んー。……なんか、もっとこう、違う感じだったけど……」
「どんな感じ?」
「なんか、ホント、マジでヤバイ。みたいな感じ」
「……そうなんだ。気になるなら、明日聞いてみれば」
「そうする」
1年生達を見て、俺ははっと気がついた。
……なんであいつ、1年なのに下から上がってきたんだ?
俺が購買に着いた時、まだ1年生の姿は少ししか見えなかった。
購買で買い終わったにしては早すぎる。
ーーすれ違った時の、あいつの怒ったような顔。
あの日の会話が頭を過る。
まさかあいつ……。
嫌な予感がした。
「悪い、理央。先に食べてて」
「どこ行くんだよ」
「ちょっとトイレ」
「ごゆっくりどうぞー」
階段を2段抜かしで上がっていく。
屋上に着いた時、俺の膝は少し熱を持っていた。
上がる息を整えながら、屋上へと続くドアに近寄る。
冷たいドアノブを握れば、手から体温が奪われていった。
「どういうつもり?」
ドアを少し開けた途端、尖った声が耳に入ってきた。
この声は、……立花雫のものだ。
盗み聞きをするつもりはなかったが、俺はその尖った声から意識を離せないでいた。
「だから、黙ってろってこと?」
恐らく話の相手は彼女だろう。雫の声は元々大きいのでよく聞こえるが、離れたところにいる為か、彼女の声は聞こえなかった。
「……そんなの、自分勝手すぎる。太陽が可哀想だよ」
俺の名前が出て、心臓が大きく脈打った。
「そんな人だと思ってなかった。……最低だね」
こちらに向かってくる足音がしたので、俺は反射的に掃除用具入れの陰に隠れた。
扉が乱暴に開けられ、雫が階段を駆け下りていく。
……。
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