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俺の家は坂道の上の方にあり、彼女の家は坂道の一番下、曲がり角の所にある。
歩いて2分もかからない距離だが、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩く。
「そういえばね、」
白い吐息が空中に溶け込んでいく。
少し前を歩く彼女が、思い出したように言った。
「この前、バレーボール部の子に告白されたの」
……知ってる。だって俺、その告白現場にいたし。
もちろん、わざと見たわけではない。
掃除の際に行くはずだったゴミ捨てを忘れていたので、放課後に捨てに行った時、たまたまその現場に出くわしたのだった。
「そうなんだ」
ピタ、と立ち止まり、彼女は体をこちらに向ける。
「驚かないの?」
「驚いて、欲しかったの?」
「うん」
うん、って……。
「話したことほとんどなかったから断ったけど、諦めないって言われちゃった」
「カレシ、いるから断ったんじゃないの」
聞くなら、今しかない、と思った。
心臓が、ドキドキと激しく脈打つ。
「しぃちゃんから、聞いたの?」
「……」
俺が黙っていると、彼女は背を向け、再び歩き始めた。
俺も彼女の後を追い、足を動かす。
「彼氏、いないよ」
後ろで手を組んだ彼女が、ぽつりとそう言った。
「え……」
今度は俺が足を止める。
「私、彼氏できたことないよ」
彼女は振り向いて言った。
「陽ちゃんがいれば、それでいいもん」
へら、と笑って、前を向く。
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