一章

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青信号になったので、ペダルを踏み込んで道路を渡る。 後ろから飛んでくる彼女の文句を聞きながら田んぼ道に入れば、遠くにそびえ立つ校舎が見えてきた。 俺達の通う県立高校はまわりを田んぼに囲まれている。 学校へと伸びる田んぼ道には、徒歩で学校へ向かう生徒と俺達のように自転車を走らす生徒の姿がある。 実は学校を挟んだ北と南では、随分環境が違っている。 俺達は田んぼの多い学校の北から来ているが、南側には駅があり、電車通学の生徒達は綺麗に舗装された道路を歩いて学校へ通っている。 簡単に言えば北は田舎、南は都会だ。都会と言うほど栄えてはいないけど。 歩いている生徒達を避けながら北門近くまで行き、直前で自転車を降り手で引いていく。自転車に乗ったまま敷地内へ入れば、校門脇に立つ生活指導の先生にこっぴどく叱られるからだ。 「おはよ、長谷川くん」 「おはよう」 クラスメイトの級長に挨拶を返し、そのまま生活指導の先生にも挨拶をした。 自転車置き場で自転車を置き、三人で昇降口へ向かう。 「長澤のヤツ、俺には挨拶しなかったのにィ」 「私と話してたから挨拶しにくかったんじゃない?」 彼女がフォローすれば、理央はコロッと機嫌を良くする。 「そうっスかね。ま、俺好きな人いるからいーもんね」 「えっ、理央くん好きな人いたの?誰?」 彼女は心底驚いたのか、目をまん丸にして理央に問いかけた。 理央はにへっと笑って、 「秘密っス」 「えー? 良いじゃん、教えてよー。誰にも言わないし、私の知らない人かもしれないし」 「俺のトップシークレットなんで!」 「トップシークレットって」 思わず笑ってしまう。 「なんだよ、これは俺の機密事項なんだぞ」 「俺は知ってるけど」 「え、陽ちゃん知ってるの?」 「うん。見てれば分かる」 「私の知ってる人?」 ちらりと理央を見れば、ブンブンと首を振っている。 「……どうかな。知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないんじゃない」 「何それ、どういう意味ー」 そうこう話している内に昇降口に着いたので、まだ知りたそうにしている彼女と別れ2年生の下駄箱で靴を履き替える。 「助かったよ太陽」
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