一章

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「太陽ー、購買行くー?」 午前の授業が終わって50分間の昼休みになれば、皆それぞれ昼食につく。 お弁当を持って来ている生徒は良いが、持って来ていない生徒は1階にある購買で買って食べる。 「行く」 弁当はあるが、いつも買うものがあるので理央と購買へ向かう。 「アー、快眠だった」 「顔にノートの跡ついてる」 「わ、恥ずかしい」 階段を下る途中見知った人を見つけたが、声を掛けるのはやめておいた。あれ以来、一ヶ月は話していないことになる。 すれ違った時の顔が何となく怒っていたように見えたので、俺は余計に声を掛けづらく思ったのだ。 購買につけば、既に生徒達で大混雑していた。 赤色のネクタイやリボンをしている3年生の姿が一番多いのは、彼らの教室が一番購買に近いからだ。もう少し経てば、1年生達の姿も増えてくるだろう。 パックのコーヒー牛乳を手にし、購買のおばさんにお会計を頼む。 理央、どこにいるかな。 「あ、陽ちゃん」 理央を探していると、今朝別れた彼女が駆け寄ってきた。 彼女も俺と同じ弁当持ちなので、購買にいるということは、 「弁当忘れたの?」 「ううん。友達の付き添い」 ニコニコと笑う彼女は、チェックのミニトートバッグを持っている。 「理央くんもいるの?」 「いるよ。今探してるところ」 「そっか。早く見つかるといいね」 ……。 「理央のこと、どう思う?」 気づいた時には、もう口が開いていた。 「理央くん? かわいいよね、子犬みたいで」 ワン!と元気良く吠える犬耳理央が、彼女のまわりをウロチョロしている図が脳内に浮かび、俺は笑いそうになった。 後で理央に言ってやろ。 「小夜子、お待たせ」 一人の先輩が彼女に近づき、それから俺を見た。 「あ、今日は長谷川くんとご飯?」 「ううん、1年の子と」 友達と食べる訳ではないのか。 それでもこうして購買に付き合っているのが、彼女らしいと思う。 「男の子?」 「違うよー。女の子」 1年、女子。 彼女はサッカー部のマネージャーをしていたが、もう引退しているので新しい友達が増えることはそうそうないだろう。しかも、同性とくれば尚更だ。 と、いうことは。 「あ、もう行かなきゃ。私、今日は屋上で食べるから、ごめんねチエちゃん」
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