1.2.葬列

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 山羊女の宮殿を取り巻くように作られた衛兵の区画、そのさらに外が少年やおじさんの住む居住区になっている。ふたつの区画は赤い色の水に満たされた深い堀と高い塀とで隔てられている。行き来できる橋はない。にも関わらず、怪我をしたり病気になったり老いたりして務めを果たせなくなった衛兵は、ある日、目が覚めると居住区にいる自分に気がつく。彼らは剣士の立場を剥奪され、衛兵の区画を追われたのだ。山羊女の夜伽の儀式に参加するための試合を闘っていた誇り高き剣士たちの多くは、居住区の怠惰で退屈な日常には耐えられない。配給所で争いを起こして死んでしまう者がある。自由の利かない我が身に絶望して赤い堀や世界の果ての溝に自らの身を投じる者もある。ごくわずかではあるが、居住区で他の男たちとの接触を避けて生き延びる者もいる。彼らは居住区の男たちから「臆病者」と呼ばれ、ひどくさげすまれていた。
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