1.2.葬列

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 配給所はいつものように喧騒に満ちていた。周りの男達と目を合わさぬようフードの帽子を深く被った少年は、男たちの群れに紛れ込み、ベルトコンベアを流れるパンと肉を慣れた手つきで素早く袋に詰め込んだ。少年が一度に運べるのはせいぜい18食、二人分の食事三日分だ。だから、三日おきに少年はこの配給所に来ていた。  ベルトコンベアから流れてくるパンと袋に入った肉は、居住区の男たちがいくら取っても尽きることがない。夜の間止まっていたベルトコンベアは、朝になり世界の丸天井が明るくなると動き出し、パンと肉を延々と運び続ける。パンと肉がどこからやってくるのか、男たちは誰も知らない。  おじさんなら知っているのだろうか。  少年はそんなことを考えてみた。おじさんなら知っていてもおかしくない。けれど、そんなことより少年が知りたいのは、この前食べたあの美味い食べ物のことだった。おじさんはアレをどこで見つけてきたのだろう。おじさんはどうして配給所ではないところで食べ物や色んなものを探し続けているのだろう。  ベルトコンベアは単調な音を響かせていた。  少年はあまり配給所が好きではなかった。おじさんからは、配給所の男達とは目を合わせるな、気をつけろ、と言われている。おじさんは滅多に配給所には来ない。探しているものがある時だけだ。  本当は、少年はおじさんが言うほどにはこの場所が嫌いではない。むしろ、活気に満ちた喧騒は、時に快く思えることもある。  とはいえ、配給所に集まる男たちが危険なことは間違いなかった。
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