俺は勇者じゃないと思う

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 ライセンスを取った空間移動魔法を使う。  ただ、俺の能力では相手に触れてないと自分しか送れない。 「トオイトコチカーク!!」  仕方なく、魔王を自分の腕に抱きしめた。  着地は魔王みたいに無駄な力はないので楽勝だ。  ぽすん、と心地よくその上に落ちた。 「レッド…」  離して、と身動ぎする。  なんかフワフワするなと思ったら! ここ、ベッドの上じゃねえか!! 「うわあ、すいませんアツシ!!」 「…別に…ええのに…」  ほわり、と頬を染めた。 「俺は春から城に研修で入りますから、勝手に出歩かないでください」 「だって…、レッドに会いたかったんやもん」  叱られた子どもみたいだ。  愛人や奥さんは嫌だが。  なんか…このひとをずっと見ててもいいな、と思ってしまう。 「勇者さま! 魔王さまはお戻りに…しっ、失礼しましたー!!」  …ん?  俺は、魔王のベッドで、魔王のそばに寝ころんだままだった。 「ちょ、待てっ!! 激しく誤解だー!!」 「激しく5回も!!」 「門番か、てめえ!!」  魔王に布団をかぶせて、ポンポンして寝室を出た。 「…くそう、なんで人生ってこんなうまくいかないんだ」  まさかアツシを、可愛いと思うなんて。 ―おわり―
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