俺は勇者じゃないと思う

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 道の真ん中に陥没があるため、立ち入り禁止という張り紙があった。 「こんな田舎まで被害が…」  つぶやいたのは、見知らぬオッチャンだ。 「あのう、そこ俺の通学路なんで、通っていい?」 「なぜ被害が出たか気になるだろ?」 「いや別に」 「魔王さまがお怒りなのだ!!」 「知らんし」 「自治体から予算がでない」 「もっと知らんし!」 「魔王さまは若い男子を好むそうだから、君が今から勇者になって魔王さまに修繕費用をもらってくるのだ!!」 「俺、学校行きますねー」  あばよ、オッチャン。  俺のことは諦めてくれ。  通れないなら、と回れ右して別の道を歩む。 「予算がでない!」  オッチャンは、俺の後ろを歩いてきた男子に、また声をかけている。 「君が今から勇者だ!」  …誰でもいいのかよ。
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