俺は勇者じゃないはずだ

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「レッド、見てみて、きれいにしたよー」 「おー、偉いなアツシ。きれいにできたじゃーん」  ピンクが滝のような涙を流している、勇者さまありがとうー、とか叫んでいる。勇者じゃないし、どうでもいいけど。 「大好き、レッド」 「おー、そっかそっか。そろそろ鞄の持ち方教えてくれ、アツシ」 「あ、オレはいつも手ぶらだから。荷物ないよ」 「そんじゃ、必要そうなもの教えて。秘書やるから」 「うん!」  ピンクが両手を振っている。なんかいいことをした…ような気がする。  魔王を倒した勇者って、こんな気分なのかも。 「ん?」  アツシが俺を見る。  ベッドになら倒せそうな気もしないでも、ない。 「今朝は法務大臣との会談、昼から城内会議で、夜はPTAのお食事会があります。遅れませんように」 「めんどくさー…」 「俺もー…」 「秘書だろー、オレをやる気にさせろよー」 「じゃあ、3時におやつ付けます」 「ホンマに!?」 「はいはい、ほんまです」  やったー、と足どり軽やかになる大魔王アツシと、おやつ何にするかな、と悩むへっぽこ秘書。  世間の荒波に負けるな。戦え、へっぽこ秘書!! ―おわり―
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